2016年8月6日土曜日

「女子と渋谷の写真展。」





「女子と渋谷の写真展。」from シブカル祭。
8. 3(wed)~8. 7(sun) @PARCO GALLERY X (PART1・B1F) 
入場:無料

過去「シブカル祭。」に参加してくれた女子写真家5人が、
「渋谷」をテーマに写真作品を撮り下ろし。
それぞれの目に映る「渋谷」の表現をお楽しみください。
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写真家の須藤絢乃さんとコラボレーションした作品が、渋谷パルコにて開催中の「女子と渋谷の写真展。」に展示されています。

今回、私は被写体として、また、「渋谷」にまつわるテキストを書かせていただきました。
会場では、そのテキストが絢乃さんの手書きによって壁に記されています。

ここ数ヶ月、「90年代の渋谷」についてあれこれ考える機会があって、そんなときに、絢乃さんから今回の(渋谷をテーマにした)作品づくりのお誘いを頂き、不思議なタイミングだなと思いました。

渋谷を象徴するパルコの節目となる、この機会の展示に携われたことを、とても嬉しく思います。

私と絢乃さんの感性を交差させた今回の作品を、ぜひたくさんの人に観ていただきたいです。

8月6日(土)夜8時からは、会場のギャラリーでミニライブもやらせていただきます。
入場無料ですので、ぜひお気軽にお立寄りください。

http://ayanosudo.tumblr.com


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私にとって渋谷が、公園通りが、特別な場所である理由。
それは、思春期に「渋谷系」と呼ばれる音楽の洗礼を受けてしまったからだと思う。

小学5年生のときに、塾の先生が貸してくれたフリッパーズ・ギター。
トラットリアというレーベル。
大袈裟ではなく、そこからすべてが始まって、そして今に繋がっている。

私には想像することしかできない、80年代後半~90年代前半の渋谷の空気。
CSVがあって、HUNTERがあって、HMVではインディーズ・ミュージックがたくさん売れていて。
パルコのセールは、岡崎京子の漫画に出てくるような、おしゃれにうるさい女の子たちで賑わっている。
そこに自分も居てみたかった。(生まれてくる時代を間違えたと、本気で思ってる。)

鹿児島の田舎で過ごしていた10代の頃の私は、いつもそんなことを考えていた。

でも、大人になるにつれ、それがだんだんと恥ずかしくなり、「渋谷系」と呼ばれる音楽や、それにまつわるカルチャーから遠ざかるようになっていった。

その理由はいくつかあった。
海外の新しいインディ・バンドなどをリアルタイムで聴くようになると、
「昔の」「日本の」音楽を聴くことはクールじゃない、と思ったり、「渋谷系」というカルチャーに心酔している人たちを客観的に見て、共感できる雰囲気じゃないなと感じたからだと思う。

でも、いちばんの大きな理由が別にある。
それは、「渋谷系」の中心人物であった人たちは、それにまつわる物事を
あまり好意的に捉えていないのではないかと感じていたから。

そんな状況で「渋谷系」を大事に愛でているのは、なんだか、
教祖が去ってしまった宗教でいつまでも過去の古い教えにすがっているような感じがして、そこに属しているのはかっこ悪いし、悔しいなと思っていた。
それだったら私は、そこからとっとと抜け出して、もっとかっこいい音楽を知ったり、自分で作ったりしよう。そう強く思っていたのだった。昨年の、ある時点までは。

昨年のある日、その中心人物の一人である小山田圭吾さんとの会話の中で私は、
彼が「渋谷系」というものを否定していたわけではなく、ただ、それ取り巻く誤った解釈や、偏った好奇心を向けられることを拒んでいただけであったということを知った。むしろ彼は、私がフリッパーズや渋谷系について話すことを喜んでくれたし、私が知らなかった当時の色々な出来事を教えてくれたのだった。

意外な、そして喜ばしい事実がわかったことで私は、自分に影響を与えた「渋谷系」というものを、
また素直に受け入れられるようになった。
いい大人になった今でもその呪縛から結局解放されていないのは、それだけ自分の血肉骨となってしまっているのだと、抗えないものなのだとわかってきたというのもある。
とはいえ、盲目的で無闇な賞賛は向けたりしないし、若い自分たちの方が、それ以上にかっこいいものを作りたい、作るべきだとも思っている。

そういえば、タイムリーなエピソードを聞いた。
小山田さんが先日、フジロックのために来日したBECKと食事をして、 
渋谷の街が見渡せるそのレストランの屋上で、一緒にのんびり話していたときのこと。
BECKが、「あ、パルコが見える」と言った。
(彼は、90年代に来日した際、パルコの看板のロゴを気に入り、自身のアルバム『MUTATIONS』のジャケットで、
同じフォントを使用している。そし て、来日する度に渋谷のホテルに泊まっていたのもあり、地図がなくても自由に歩き回れるくらい、渋谷を知り尽くしている。)
小山田さんが、「渋谷のパルコ、もうすぐ閉まっちゃうんだよ」と言うと、BECKはとても驚いて、「90年代とはずいぶん変わっちゃったよね。あのときの渋谷は本当にクレイジーで最高だった」と、懐かしそうに話していたそう。
渋谷の街は、パルコは、BECKにとっても思い出のある場所だったのだ。
なくなっちゃう前に、思い出の看板を見られてよかったね、BECK。

渋谷がこれからどんなふうに変わっていくのかわからないし、
ノスタルジーに浸ってばかりもいられないけど、
かつての渋谷が、ある強烈な魅力を持った街だっ たことは間違いなく、そこからたくさんのカルチャーが生まれてきたのは素晴らしい事実で、の影響はきっと脈々と続いていくものだとも思う。
そして、それを上回る新しい「何か」が、また渋谷から生まれてきたらすごく面白いと思うし、やっぱりずっと、そういう街であってほしい。どうしても、そう思ってしまう。

2016年7月31日

SHE TALKS SILENCE
山口美波

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S.T.S.